個人の活動>1995年阪神淡路大震災被災者の教訓集


この教訓集はインターネットがはじまる前の「パソコン通信」時代に@niftyサイエンスフォーラムにおいて、伊豆倉正敏の原稿に伊豆倉恵子氏・数越達也・長谷達夫が意見を出して共同でまとめたものである。
この教訓集については著作権を放棄します。災害発生時など緊急時にご活用下さい。

また二次引用などで引用関係がややこしくなるのを避けるため一次著作権宣と著作権フリー宣言を行います。


1995年阪神淡路大震災被災者の教訓集

20038月数越さんのホームページにて公開開始

20160409日第4版 諸般の事情で伊豆倉のホームページに移動

他の災害で事例の免責を追記、著作権フリー宣言


 この教訓集は、1995年の阪神淡路大震災に遭った4人が反省として書いた教訓です。しかしこれは、あくまでも阪神淡路大震災での反省であって、今後に起きる地震の時は、私たちとは違う想定外の事態が起こることもあり得ます。そのことは予め理解して下さい。

2016/04.09追記)この記録はあくまでも1995年阪神淡路大震災での経験を元に書いた「アーカイブ」です。防災・減災のための災害マニュアル作成時のひな形としての使用については転載・引用は自由ですし、そのために文字が拾える系式でのインターネット公開をしていますがが、その後の災害の教訓、例えば

     新潟中越地震で自動車を避難所で使用した人に発生した「 エコノミークラス症候群 」

     東日本大震災で浮き彫りとなった海岸沿いエリアでの「 津波避難 」

     恐らく山脈周辺の河川で発生するであろう崖崩れによる自然ダムとその崩壊による土石流・鉄砲水など

災害のたびに新しい教訓が生じるでしょう、住んでいる・働いている地域でのハザードマップ・防災マニュアル等の作成に流用される方はその点にご注意下さい。「教訓集」と銘打っている以上経験していない事を書く事には心理的抵抗があります。

(伊豆倉本人としては、新潟中越→東日本大震災の被災者・経験者に追記して頂く「 引き継ぎ 」を希望します。)


 地震は「自然災害」ですが、その後の対策の間違いや遅れは「人災」です。「あの時ああしていれば よかった」ということが無いようにするためにも、この教訓集を参考に使って下さい。
 日本は「地震国」です。まず地震災害に遭わない地域がないと考えましょう。生きている内に起きるかはともかく、地震が必ず起きるということを覚悟してこの教訓集を参考にして下さい。

0.地震に遭う前に、
 

 

0−1.

 まず自分が住んでいる地域が地震に遭うのか、遭うならばどのぐらいの震度で地震の発生確率はいくらかを調べて下さい。この教訓集を書いた阪神淡路震災地区では、過去を調べれば幾たびも地震に見舞われていたにもかかわらず地震前に、「神戸には地震がこない」等という間違った話があったために、対策を行っていなかったため結果として被害が大きくなりました。

 

0−2.

次に自分の住んでいる土地では地震発生時にどのような 二次災害が起きる恐れがあるのかを調べて下さい。津波被害予想地域、土砂崩れ予想地域、土石流の恐れのある地域、ダム決壊の恐れのある地域、液状化の恐れのある地域、ガス爆発、放射能汚染の恐れのある地域等になっていることを予め知っておくと、その後の避難・対策・するべき事などを決める大切な基準になり、被害を少なくすることができます。各地方自治体が発行している「防災ハザードマップ」はかなり参考になります。
参考
日本の地震研究機関http://homepage2.nifty.com/ja3tvi/link/link1.html
日本の地震研究のしくみhttp://homepage2.nifty.com/ja3tvi/link/link29.html

 

0−3.

2次災害予測とは別に自分の家の立つ場所の地盤も調べて下さい。
川に近ければ、川の氾濫の跡の砂の地層であったり扇状地であったり、固い地盤の場所であるとか、阪神大震災の震度は、場所により大きく変わっています。被害の 大きなところは、いろんな断層の隔壁の破壊により影響を受けたようで、ねじりこむような動きで、単純に言い表せない複雑な力が加わる事があることも考慮して下さい。防災情報ではここまでは調べきれていないことがあります。

 

0−4.

あらかじめ、家族の避難先や避難先などを親戚や会社などに伝えておきましょう。また安否情報の連絡手段なども後に書く6−6にある「電話が一時的に集中する ために通じ にくくなる現象」での安否情報が出来なくなる事を防ぐための伝言リレーをするためにもしておくと便利です。

 

0−5.

家具には出来るだけ転倒防止対策をしておきましょう。

 

 

 ・

転倒防止金具にはL金具やチェーン式のものがあります。

 

 

また釘やねじを壁に打ってはいけないマンションなどでは、

 

 

 ・

突っ張り式という2重パイプを使って長さを調整・仮止めした後ねじを廻して2重パイプの長さを伸ばし天井と家具を突っ張らして倒れなくする方式の倒れ止め器具

 

 

 ・

家具の下にひいて地振動を吸収する「耐震吸着マット」

 

 

 ・

家具の前下にひいて前に倒れるのを防ぐ器具

 

 

があります。(一部の引っ越し業者では引っ越し時にオプションで「耐震吸着マット」をつけてくれるサービスがあります。)

 

0−6.

子供や寝たきりの老人などの部屋にはたんすなど倒壊するものなどおかない。

 

0−7.

ガラスのショーケースなど、人形のものなども出来れば家具の上には置かない。

 

1.地震にあった時は、

 

1−1

とりあえず落ち着いて、パニックにならないようにして下さい。
まず我が身の安全をはかりましょう。次に揺れがおさまったら安全なところへ 避難、そして人を助けるという順番を守ってください。

 

 1−1−A 自宅・勤務先など屋内で地震にあった場合

 

 

 ・

机の下に入ったり布団をかぶるなどして自分の身の安全を確保してください。

 

 

 ・

マンションなどの場合は出入り口を開け、避難経路を確保してください。

 

 

 ・

揺れが大きい時は家具が転倒して襲ってくることがあります。気を付けて下さい。

 

 

 ・

同じく横揺れが強いと引き出しが何メートルも飛び出してくることがあります。これにも気を付けて下さい。

 

 

 ・

棚に置いているものの落下にも注意して下さい。

 

 

 ・

揺れがおさまったら、火を消し、ガス の元栓を閉め電気のブレーカーを切りましょう。

 

 1−1−B 屋外で地震にあった場合

 

 

 ・

ビルや住宅の横では上からガラスや瓦が降ってきます。カバンなどで頭を守り建物から離れましょう。

 

 

 ・

地下街などでは、人波に押しつぶされないよう物陰に隠れ、揺れがおさまったら地上へ上がりましょう。

 

 

 ・

看板や電柱は倒れてくると考えておきましょう。

 

 

 ・

揺れがおさまっても、電線が切れて垂れ下がって感電したり、ガス漏れが生じたりしますので、危険を感じたらすぐに避難しましょう。

 

 1−1−C  鉄道・バスなどで地震にあった場合

 

 

 ・

衝突などによる、窓ガラスの破損による怪我が考えられます、出来るだけ通路側によるか、脱いだ服や荷物で窓ガラスとの間に、仕切を 挟んで破片による怪我を防いで下さい。

 

 

 ・

鉄道では、震源に近いところでは、脱線のために実際の地震の揺れよりも強い揺れが感じることがあります。ただし、脱線後、レールの上ではなく枕木や砂利を削りながら走ることにより、通常ではあり得ない急減速と短い移動距離で列車が停止する事が阪神淡路の震災で立証されています。

 

 

 ・

鉄道では、乗務員の指示に従って行動して下さい。ただしワンマン運転などの場合乗務員が負傷していて指示できなくなっていることも考えれます。いちよう各車両の両側面に最低1箇所ずつ「Dコック」といって、急ブレーキをかけた上でドアを開ける事ができるコックが付いていますが、むやみに開けて脱出すると、隣の線路を走っている列車 にはねられたり、鉄橋の枕木の間から落下したり、高架橋から落下したりする恐れがあります。また地下鉄では、上ではなく線路の横に電線が走っているところもありますので、感電の恐れがあります。

 

 1−1−D  自動車運転中に地震にあった場合

 

 

 ・

とりあえずブレーキを踏んで下さい、ただしハンドルには注意して下さい。

 

 

 ・

地震は初めは縦波が来ます。この時に自動車がバウンドしていて、タイヤが一時的に地面に設置していないために、ハンドルを切っても車体が曲がらないという錯覚が発生します(空中でタイヤの向きだけが変わっている)。この時にさらにハンドルを切ると、縦波が収まった後で、タイヤが地面に接地して、予想外の急ハンドルを切ることになり、近くの車や、側壁に衝突する事故が発生します。ハンドルは、初めは地震直後の位置を維持し、縦波が収まり横波が来た時に適切に廻して下さい。

 

 

 ・

車から離れる時は、後から来る警察・消防隊・自衛隊などの緊急車両が通る時に移動ができるように、必ずキーは付けたまま、エンジンを切って離れて下さい。

 

1−2

あわてて外に出ないで下さい。屋根瓦や窓ガラスの破片、建物によっては壁の一部が落下してくることがあります。

 

1−3

家から出る時は、家の火の元は必ず確認して火事があった場合は初期消火をしてから 出て下さい。

 

1−4

震れが大きい時は、今のガスメーターは大抵の場合、地震遮断器がついていてガスはそこで止まる仕掛けがついていますが、念のため、ガスの元栓は締めてから、家から出て下さい。(注意1)

 

1−5

むしろ危ないのが通電火災(注意2)なので電気のブレーカーを必ず切ってから家の外に出て下さい。(ブレーカーが切れていることが確認できないと、停電から復旧した 際に関西電力は通電してくれませんでした。)

 

1−6

被災地の外に避難する場合は連絡先を玄関先に明記してください。

 

1−7

海岸では津波が来ることを想定して、すぐに高い土地へ避難しましょう。高い土地が近所にない場合は鉄筋コンクリートの4階建て以上の建物に避難しましょう。

 

 

 

2.家から外に出た時は、

 

2−1

津波の被害予想地区では至急高台等に避難してください。

 

2−2

土砂災害予想地区でも、至急避難して下さい。

 

2−3

上記の被害予想地区以外では、自分の家族だけでなく、近所の人の安否の確認もして下さい。(救助隊が来るまでは想像以上に時間がかかります。大災害の場合には、警察や消防を頼らずに住民同士で互いに助け合って下さい。)

 

2−4

ラジオなどで「正しい情報」を聞いて「デマ」に惑わされないようにして下さい。

 

2−5

火事が起きた時は、できるだけ初期消火に努めて下さい。

 

2−6

バケツリレーをする時は各家庭に1個あるかないかの「バケツ」よりも、どの部屋にも必ず1個はある「ゴミ箱」の方が数多く集まります。又そのほかにも「水」の入れそうな物は思いつく限り全て使って下さい。

 

2−7

少ない水で消火するためには、すでに燃えている家に水をかけても、表面の火は消えても下の部分では火が残っているために、また燃え出すので、無駄です。次に燃えだしそうな家に水をかけて火が広がるのを防いで下さい。

 

2−8

同じく、燃えている家の近くにある倒壊家屋の木材を片づけて延焼を防ぐのも効果的です。火の粉は以外と広がって延焼します。火の延焼防止に努めて下さい。

 

2−9

倒壊家屋から人を救助す る時には、自動車に積んである「ジャッキ」やノコギリ、ハンマー、できればチェーンソーがあると便利です。

 

2−10

絆創膏・包帯などの薬箱は持ち出して、本人・家族だけではなく、近所の人の応急処置に使って下さい。

 

2−11

安否の確認のためなどで被災地内を移動する場合は、自転車やオートバイを使いましょう。自動車では渋滞を起こし救援車両の到着を遅らせます。 
(気持ちは分かりますがあなた達の自動車の後ろで渋滞が起きると後ろから来る、救援車両の移動が遅れ助かる命が助からなくなる可能性がます。むしろ経験上渋滞する車よりも、オートバイや自転車の方が、倒壊家屋や倒れた塀をまたいだりできるので移動時間は早いです。)

 

 

 

3.避難所に避難する時には、
   (ここは避難しない方は読み飛ばして下さい。)

 

3−1

避難時には、どこに避難ししているかを書いた紙を貼っておくと、安否確認をしに来てくれた人や、救援物資を持ってきてくれた人の捜索にかかる手間が省けます。

 

3−2

通帳・印鑑など大事な物は持ち出せれるなら持ち出すこと。

 

3−3

絆創膏・包帯などの薬箱は、持ち出して、本人・家族だけではなく、近所の人の応急処置に使って下さい。(2−10と同文)

 

3−4

避難所は、多くの人が集まります。場所が足りなくなるので「必要最小限」以外の物は、持ち込まないで下さい。

 

3−5

被災地で、被害が大きい人ほど避難が遅れ、「避難所」にたどり着くのが遅れます。スペースに余裕があってもできるだけ場所を使わないようにして下さい。

 

3−6

避難所の管理者はお年寄りや身体の不自由な方などが避難できる空間をあらかじめ空けておきましょう。

 

3−7

決して自動車で避難しないで下さい。(気持ちは分かります。)でもあなた達の車の存在で渋滞が起きると、負傷者の搬送、火事の消火、倒壊家屋や土砂崩れ現場での救出等が遅れます。

 

3−8

避難所の管理者は、避難者の名簿を作成することが必要です。

 

3−9

避難所には、安否確認に来た人のために、各部屋別に誰が避難しているかを書いたリストを用意しておくと便利です。 (これは、更新を繰り返すと思いますので、ロータスかエクセルでつくった方がいいと思います。)

 

3−10

避難所指定場所、以外の場所で、あふれた避難者を受け入れて「指定外避難所」ができることがあります。(町内会館・児童館等)、その場合、行政機関からの「救援物資」が届かないので、行政に「ここも避難者」がいる。と申請して下さい。

 

3−11

避難所になった学校の管理者は、避難所の管理運営と学校の業務再開に必要な教室を確保してください。体育館と普通教室を避難所として最初に開放してください。事務室・職員室・保健室などは開放してはいけません。

 

4.被災地で生活するためには、

 

4−1

食料、飲料物(ジュースを含む)は、初めは住民同士で分け合って下さい。(注意3)

 

4−2

避難所の担当者になった方は、食料品などの要求リストを作る時は、近所の店屋が開くまでは、周辺住民で避難所に避難していない人の分も、請求して下さい。彼らも食料・水は不足しています。(注意4)

 

4−3

夜中はできれば避難所等の安全そうな場所にいること。家が大丈夫という方は、家にいてもかまいません。(暗いと想像以上に避難しにくいです。)

 

4−4

ローソクの使用は厳禁です。余震で倒れたりガスに引火して火事の原因となります。懐中電灯を使用すること。
(1995年の阪神淡路大震災の時にはなかったのですが、LEDライトの方が電池の持ちが良く長時間使えます。)

 

4−5

「炊き出し」をする時は、被災者の同意が有れば、倒壊家屋の木材を使ってあげて下さい。(初めは嫌がるかもしれませんが。)そうすることで、倒壊家屋に被さっているものが減って、被災者が安全に物を取り出せれる様になります。

 

4−6

家を先に片づけたい気持ちは分かりますが、緊急車両・ゴミ回収車の通行を確保するために、「道路の確保」を優先して下さい。道路に倒れた家や、塀などを先に片づけて下さい。

 

4−7

移動する時に使う鞄は、「リュックサック」が便利です。余震発生時には、両手が自由に使えるようにしていた方がいいですし、道路上には、色々な物が散乱している ため、つまずいて転けやすいので両手の確保が大切です。

 

 

 

5.家の片づけなど

 

5−1

倒壊家屋や半壊家屋では、「つっかい棒」をしたり、屋根から物をはずしていくなどして、余震などで倒れてこないようにしてから物を取り出して下さい。

 

5−2

家に帰る時は、家具が散乱している場合は、靴のままで上がるか、スリッパを履いて下さい。(食器や照明器具・置物などの割れた、陶器片・ガラス片で足を切ったり、柱や家具の裂け目部分等で足の裏を切ったりとげが刺さることがあります。(注意5)

 

5−3

同じ理由でできれば軍手か、ゴム手袋をはめて、家具を片づけて下さい。(ここも注意5)

 

5−4

倒れた食器棚を戻す時は、先に落ちて隙間を埋めて、それ以上落ちずに残っていた食器が食器棚を立てる時に、落ちてきて割れるので、先に食器やコップを横から手を入れて(もちろん軍手(できれば2重重ねで)やゴム手袋着用の上、破片で怪我をしないように注意してから)取り出して下さい。

 

5−5

倒れた家具の上を通る時は、たいていの場合、裏板は薄いベニア板ですので 踏み抜かないように横板の部分を踏んで通って下さい。踏み抜いた場合は大けがになります。(ここも注意5)

 

5−6

ブレーカーの電源を入れ直す時は、通電火災(注意2)が起きる恐れがあることを考えて、注意しながら付けて下さい。

 

5−7

通電後、照明器具を点ける時は、電球、蛍光灯が割れていてショートする恐れがあるということを考えてから点けて下さい。

 

5−8

同じ理由で電化製品を使う時は、発火に注意して下さい。

 

5−9

しばらくは、ゴミの集積所に山ができます。車両の通行が妨げられないように近所の人と話し合って、ゴミの山は一時的に出すのを待つなどを考えて下さい。(すぐに壊れた物を捨てて片づけたい気持ちはよく分かりますけれど、火災などの対策のためにも、緊急車両が走れるように道路の確保が優先です。)

 

5−10

一部損壊の場合で、屋根瓦が落ちて雨漏りがする時は、「ブルーシート」を屋根に被せることでとりあえず住むことができるようになります。

 

6.その他の教訓・反省

 

6−1

被災者には「がんばれ」という言葉をいわないようにして下さい。
(と書いても他の言葉が思いつかないのも事実ですが)
(大変でしたねと、同情するなりして、心の底に溜まっている不安を話して解放してあげるのも手です。)

 

6−2

大きな余震がきたら被害を受けた建物は倒壊すると考えて行動しましょう。しかし、余震はよほどの直下でない限り、先に地鳴り(阪神淡路の震災では本震余震含めてはずれたのは2・3回)や初期微動がありますので、主要動(本番の地震)が来る前に避難なり、少しでも安全な位置に移動することができるようになります。

 

6−3

給水車などからの水を配る時は、飲み水や食器洗いに使う「飲料水」と掃除、洗濯、トイレの水流し等に使う、「生活用水」とに分けて(できればマジック書きなどで明記して)渡して下さい。「生活用水」に使って細菌汚染した容器で、別の人に渡した時に、「飲料水」に使われると、病気の感染のおそれが発生します。

 

6−4

「飲料水」はペットボトルに入れられている方が安全です。

 

6−5

「生活用水」は、近くの川や池、飲料禁止となっている井戸でも充分使用できます。「給水車」の移動回数を減らしてあげるためにも、できればそれらを使用して下さい。(渋滞防止のためにもお願いします。)

 

6−6

「電話回線」は、初めは安否確認のためにいっせいにかかるので、回線はパンクし通信不能になります。家族の安否の電話は、一番大事な人にかけもし繋がったら親戚などに伝言リレーしてもらうようにして、できるだけ回線数・回線使用時間を減らしてあげて下さい。 (1995年にはなかったのですが、NTTでは災害時の通話が出来にくくなる輻輳現象対策のため「災害用伝言ダイヤルサービス」というものを始めました。※追加1)

 

 

 

追加文

 

これは1995年の阪神淡路大震災の時には無かったサービスです。「教訓集」の趣旨からはずれますが「防災・減災」に関わることなのであえて追加します。

 

追加−1

1995年にはなかったのですが、NTTでは災害時の通話が出来にくくなることを防ぐため「災害用伝言ダイヤルサービス」というものを始めました。災害時に電話が輻輳する地域ではなくて、電話回線に余裕のある被災地以外に臨時の無料留守番電話センターを開設する→輻輳する地域外なので何とかつながるサービスです。

1.伝言の録音
171−1−市外局番−自宅電話番号
市外局番が入っていることに注意して下さい、被災地域外で録音・再生するサービスです。

2.伝言の再生方法
171−2−市外局番−自宅電話番号
プッシュ式の電話機をご利用の方は数字の1(いち)のあと#(シャープ)を押して下さい。
ダイヤル式の方はそのままお待ち下さい。なお、電話番号が誤りの場合、もう一度おかけ直し下さい。というサービスです。ただしNTTが災害が発生し、輻輳がおきそうだと判断した時に提供されるサービスです。)

 


注意1.
 誤解をまねかないように、極論を言えば、揺れが大きすぎる場合は、あわててガスコンロの火を消す方が危険です。全半壊になった場合は仕方がないですが、地震が治まった後で火を消しても充分に間に合います。というか大抵の場合には自動的に火が消える仕掛けがついています。むしろ台所はスペースの割には家具が多く下敷きになりやすい上に、天袋や家具から落ちてくる食器のため、陶磁器物の破片やガラス片が一番散乱する場所なので揺れている時に向かうのはかえって危険です。

注意2.
 地震後の電化製品は、ガラスが割れた電球や付けっぱなしのアイロン、割れた水槽のヒーター等の他、家具の下敷きになって絶縁が破られたり、導線がむき出しになったコードや、家具に挟まれつぶれた電気のプラグがあります。
 地震直後は、送電線が切れたりしていて停電しているのですが、住民が住んでいるいないにかかわらず電力会社が送電線をつないで(ですから区域ごとに一斉に通電します。)しばらくしてからそこから発生する火事が多く発生します。これを通電火災といいます。 
 一部損壊時でも、家具が倒れたりしいる場合には、念のため、ブレーカーを切ってから避難し、ブレーカーを付ける時は、家族が帰ってからで
できれば家具が片づいた後、それもできれば家具の裏のコードの被覆も確認してからやって下さい。関西電力も1995年2月にはブレーカーを切っていることを確認して通電していました。

注意3.
地震直後は、緊急救援隊の通行や負傷者の搬送の方が優先されます。使える道路が限られるので(土砂崩れ、高速道路の倒壊、家屋の倒壊、橋の浮き上がりなどで、通行不能区間が多いです。)は、救援物資は二の次です。
 たまに、「当日食料が来なかった」という人がいますが非常時はそれが当たり前です。で、一部損壊家屋の場合は、冷蔵庫や納屋、物置場、戸棚などに残っている食料があるのですから、腐る前にそちらを分け合って下さい。

注意4.
 周辺で店屋が再開した場合で「ぼったくり」をしてないという確認をした後は、避難所にいる人だけの分にして請求して自立できる人はそちらで買わせてあげて下さい。そのせっかく復興した店屋が倒産の危機になります。(2次災害の後なので、3次災害と呼んでいました(笑))

注意5
医療機関が混乱してとにかく重傷者が優先なので、軽傷者は後回しにされます。できるだけ怪我をしないようにして下さい。
とにかく、怪我や病気は、医療機関が混乱している内は、できるだけしないように注意して行動して下さい。

注意6
これは、あくまでも「阪神淡路大震災経験者」が経験したことから書いたマニュアルです。しかし地震の被害対策をマニュアル化することには長・短所両方があります。短所は、マニュアルに書かれていない事態が生じると対応できなくなることです。地震のたびに新しいタイプの被害が出ますので、その災害に応じた臨機応変な対応をして下さい。

 私たちは今回の地震で、つらい経験をしました。それと同時に普段からの近所づきあいや地域社会などのコミュニティの大切さを思い知らされました。
 地震が起きて倒壊家屋が発生したり、また家族全員が家具の下敷きになるなどして誰も家から外に出られないケースが起こります。地震発生後まず近所の人同士で安否を確認し合いますが、この時に、「あっ○○さんがいない」とか「○○さん所の△△さんは」と気づいてもらえる近所づきあいがあれば、すぐに救助・救出作業に取りかかれました。また消防隊・警察官・自衛隊の方々が来た時にも、この倒壊家屋には何人が下敷きになっているといってくれる人がいれば救出される確率は上がります。しかし普段からコミュニティに参加していないと「ここ倒壊しているけれど人住んでいたかなあ」と言うようなことになりかねません。最悪の場合は、家族の方・友人・知人・勤務先の同僚が来るまで、この倒壊家屋に人がいるかどうかが分からないと言う事態になることもあり得ます。
 またその後の被災地での生活をする上でも・生活をする時でもコミュニティの大切さを思い知らされました。
 自分一人・自分の家族だけでは被災を乗り切ることはできません。教訓集の締めくくりとして、普段からの近所づきあいや地域社会などのコミュニティの大切さをあげて締めくくらして頂きたいと存じます。

伊豆倉正敏、伊豆倉恵子、数越達也、長谷達夫 共筆 


阪神淡路大震災の火災に対する体験記と教訓は次のページにあります。

 3面張り河川の問題点-バケツリレーをやってみて(伊豆倉 正敏)

参考 震災復旧の例−神戸高速鉄道の建築界縮小

 


関係リンク

長谷 達夫様のホームページ



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